スペシャル

大決戦!超ウルトラ8兄弟 製作日誌

2007年12月

12月1日(土)~12月3日(月) 山下埠頭

山下埠頭のミニチュアSETは前作ポートアイランドとほぼ同様のセッティングになっている。
ポートアイランドと似たような立地条件になっているからだ。
異なる点は、ポートアイランドは行楽施設やマンションがあるのに対し、山下埠頭は純粋な倉庫街となっている点だ。
山下埠頭のミニチュアSETで撮影される内容はパンドンの登場、メビウスとパンドンの格闘。
及びゴルドラス、シルバゴンの出現と行進で、パンドンとの格闘後半では体力を消耗したメビウスがヒッポリト星人の罠に落ち、ブロンズ化されてしまう。
ブロンズ化されたメビウスが放置されるのは山下埠頭先端の突堤部分のすぐ前の海上で、それらは全て本編実景との合成になっている。

12月4日(火) グリーンバック
12月5日(水) 撮休
12月6日(木) グリーンバック

やや伏せ目を狙いとしたカット。
床面にもグリーンバックを貼り撮影を行う。

12月7日(金) 切り合わせカットの撮影

先に申し上げたように合成カットの撮影方法は無数にある。
この日撮影されたのは切り合わせ合成のカット。
通常背面からの撮影を行う合成カットだが、前面が本編での画作りの場合はそれらと異なる。
スケジュールの都合でどうしても本編部分は先に撮影しなければならないので、今回、撮影されるのは基本順番とは逆の背景部分になる。
本編において撮影された「大通り公園」「伊勢佐木長者町」「大岡川」では、背景が特撮で構成される。
特撮の現場では手前の飾りがほぼない状態でミニチュアSETと怪獣を撮影する。
ほどなく、それらの撮影が終了すると、明日の撮影の準備。
デイシーン部分最終日として、ゲスラの赤レンガ倉庫破壊の準備が開始。
ゲスラを配置し、カメラポジションを決定。
ハイスピードカメラ、ハイモーションもこの日用意され、明日の本番撮影を迎えるために入念なチェックが行われる。
ポジションが決まると、赤レンガ倉庫のミニチュアに見たて、ほぼ同じ大きさのダンボールが用意され、何度かリハーサルを行う。
その間、カメラポジションを微調整し、他の2台のカメラもセッティング。


本番さながらのリハーサルが進行し、いよいよ、破壊用の赤レンガ倉庫が運び込まれる。
壊し用のミニチュアの準備は、決定された場所に設置することから始まる。
カメラから見て設置位置を微調整すると、しっかりと固定される。


固定作業が終了すると、美術部は壊し用のミニチュア以外の飾りに入り、代わって操演部が登場し、石膏で作られた壊し用ミニチュアを切り刻んでいく。
破壊の際、これは効果的な壊しの表現をするためで、きれいに作られた赤レンガのミニチュアが無残な姿へと変わっていく。
この「切り込み」作業が終了すると操演部は内部の細かな仕掛け作業へと、移行し、そのころ、おおよその全体飾りの検討をつけた美術部の一部のメンバーが、切り刻んだ表面の修正に入っていく、修正に使用されるのは石膏ではない。
せっかくの壊しの効果の妨げにならないようにかたく固まらない素材が使用される。
それはタルクと呼ばれるもので、いわゆるベビーパウダーなのだが、これを水でセメントのように溶き合わせ傷口を塞いでいくのである。
この表面の傷口を塞ぎつつ、色や、細かいパーツなどを丹念に仕上げ準備完了となるのだが、ものすごーく時間が掛かります。
作業は夜まで続き、明日の朝更に修正を施す。

12月8日(土) 特撮でのメインイベント赤レンガ倉庫の破壊

昨日、準備された赤レンガ倉庫のミニチユアほか細部に至るまで、フレーム内が飾られる。
この作業の間、空きスペースを利用して、ゲスラは更にリハーサルを繰り返す。
準備が整った、いよいよ撮影だ「ヨーイ、ハイ」
長時間かけて作られた赤レンガ倉庫がゲスラによって破壊されていく。
台本上の文字がついに、現実化した。


ドーンダーンドーン、「はーい、カット」
一瞬の出来事である。
HD撮影の利点はこの撮影された映像をすぐに確認することが出来る事。
ハイスピードで撮影された映像は素晴らしく、かつての「ウルトラマン」に負けない。
素晴らしい映像を収めることができた。
と・・・
喜ぶのも、つかの間、次は、シルバゴンのビル壊しだ!
出来あがって来たビルを見て、さてどのように壊そうかと談義になる。


壊しビルの撮影は、当然一発勝負、慎重な意見がスタッフの間に交わされる。
正直、TVシリーズや他の劇場版でうんざりするほど壊しを経験してきた。
私は、ちょっと突拍子ないが、ウルトラ怪獣でなくてはやらない方法を提示した。
頭でドツキ壊す方法だ、他作品では、巨大生物は生き物としての位置づけがあるため、怪獣自らが「痛み」を感じる方法では建物を壊さないのが基本ルール。
つまり「進行方向に邪魔なものがあるから壊す。」あるいは「何者かにやられた際、倒れて壊す」(前者は迂回出来れば迂回する場合もある)ということなのだが、ウルトラにはこのルールはあまり当てはまらない、「迫力」の方が優先されるのだ。
今回シルバゴンの壊しはまさにウルトラ的な壊しといっても過言ではないのだ。
前日と同様の段取りをし、準備が始まる、カメラポジションが決定された時点から・・・


時間が・・・ずーとかかります。
準備に忙しい美術部、操演部ですが、ほかのパートは手が空くようになるので・・・
別のSETでグリーンバックの撮影!そう、時間を無駄にしてはいけません。
「鬼!悪魔!」などと、罵られつつ、残ったカメラを持ってカプセルに閉じ込められるメビウスのグリーンバックの撮影がスタート。
ほどなく戻ってきたが、まだまだ準備は終わらず。
夕食を食べるギリギリ前になって準備が完了する。


ドカーン
赤レンガより更に一瞬の出来事、ハイスピードの画の確認。
見事!大成功でした。
無事、特撮らしい一日の終わりを迎える事が出来ました。

12月9日(日) グリーンバック

ウルトラマン関係のグリーンバック。
ウルトラマンが8体もいるとグリーンバックも大変。
光線やもろもろの合成の都合、ライティングの都合等から、全員一緒には撮影できず、8体揃いのショットでも、一体づつしか撮影できない。
通常、仕掛けなどの具合にもよるのだが、一日で撮影出来る特撮カットの平均は約30カット。
この8体のカットが4カットあるだけで、実質34カット撮影しなければならないのだから気が遠くなる。
一方11stではデイシーンのミニチュアが撤去され、ナイターの準備が始まる。

12月10日(月)

日活撮影所でナイターの準備が進む中、撮影部と実景ロケへ。
ロケハンでも行ったベイブリッジの橋脚頭頂部からの実景撮影よりスタート、映画トップカットの水面キラキラなどを八景島で撮影はして無事終了した。

12月11日(火)

撮休

12月12日(水)

11stのSET準備、特撮におけるナイター撮影は手間手間手間の連続である。
ビルの明かりや、街灯などなどの細かな仕込みが果てしなく続く。
ナイター最初のカットは日本大通りを模したミニチュアSETとなっており、準備日であるこの日はキングシルバゴンも配置し正確なカメラポジション決めも行われた。

12月13日(木) 特撮ナイター初日

日本大通を模して作られたミニチュアSETの奥で振り向く。
キングシルバゴンが火球を放つシーン。
カメラはクレーンに乗り、ミニチュアSET下部から、横移動しながらクレーンUPしていくと奥にシルバゴンが現れ火球を放つアクションと共に手前に仕込まれた仕掛けが弾ける。
劇場版では珍しいナイターの広い画づくりである。
撮影中盤を迎えると、SETを一番広く使ったティガ、ダイナ、ガイアVSヒッポリト、シルバゴン、ゴルドラスの怒涛の混戦、撮影前から殺陣の岡野さんの元、練習が繰り返されてきたカットで最も時間が掛かるのではという予想に反し、練習の甲斐あり、あっという間にOK。
苦労が報われた瞬間だった。

12月14日(金)

ナイターでの撮影は、効率よく撮影を行う為、順番に撮影していくことがほとんど無い。
全ては段取りと仕掛けが優先される。
ナイターのブロックは大きく分けて、ウルトラマン3人方向の画作りを行うウルトラマンブロック。
ティガVSヒッポリト星人ブロック
ダイナVSシルバゴンブロック
ガイアVSゴルドラスブロック
5兄弟ブロック
とあり、今日はそのうちの、平成ウルトラ3体ブロックになる。
「ウルトラマンガイア・ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ超時空の大決戦」以来の3ショットが再び!

12月15日(土) ティガの格闘プロック

今回ティガを演じるスーツアクターは岩田栄慶。
実はウルトラマンメビウスも共に彼が演じており、8体勢揃いのカットのみTVシリーズメビウスでお馴染みの和田三四郎が友情出演している。

12月16日(日) ガイア格闘ブロック

今回ガイアを演じるスーツアクターは相馬絢也。
前作、初代ウルトラマンを演じた彼もまた、ガイアとマン両方のキャラクターを演じている。

12月17日(月) ダイナ格闘ブロック

ダイナを演じるスーツアクターは福田大助。
前作ゾフィーを演じ、一部のバック転ではメビウスも演じていた。

12月18日(火) メビウス&4兄弟ブロック

久々の顔合わせ。
スーツアクターは、セブンを演じるのはVIDEO版セブンでも活躍した山本諭。
ジャックを演じるのは岩崎晋弥。
エースを演じるのは丸山貢治。
円谷キャスタッフの精鋭たちだ。

12月19日(水)

今日は軽めの撮影をして翌日の8体ウルトラマン勢揃いのSET準備。
手前に海のSETを組むが、のちに本編で撮影した海の素材に入れ替える。
一部のPVには時間的な問題で合成が施されていないものもある。

12月20日(木) ズラリと揃った8兄弟の撮影

SETでの8体勢揃いは、この日しかなかったので、予告用、特報用のものも含めて、ここで撮影。
前日にふと思いついたマナーCMのウルトラブロックのみ。
本当に、ここで撮影する。
揃って×印を出した姿にスタッフ一同爆笑だった。

 
12月21日(金)

撮休

12月22日(土)

東宝ビルトにてハイスピードカメラを使用しての素材撮影。
長年ウルトラを撮影してきた東宝ビルトも取り壊しが決まり、ウルトラ映画では今回が最後の撮影となる。

12月23日(日)

更にハイスピードカメラを使用したナイター分のゴルドラスのビル破壊。
ガイア登場の着地などの撮影。
特にガイア登場に関しては、久々だったこともあり、興奮度高まる撮影となった。

 
12月24日(月) グリーンバック

広範囲を使用するグリーンバックの撮影。
前日の撮影でミニチュアSETでの撮影はすべて完了したので、No11stを掃除してのグリーンバック撮影となる。
片付け等で午前中いっぱい使い、午後からスタート。
軽い内容になる。

12月25日(火) 特撮クランクアップ

ああっついにここまで来ました。
最終日はウルトラマン巨大化シークエンス。
前回スチールを利用して構成された、いわゆるグングンカット。
今回は、かつてのTVシリーズで使用されたミニチュアの人形を使用。
新作カットで、すでに存在するメビウスと変身パターンの違うセブン以外、全てのウルトラを撮影する。
使用されるミニチュア人形は、強力な迫力を出すため、正面から見たときのみ成立する造形が施されている。
実際には突き出された握り拳が顔よりも大きく造形されているのだ。
極端なパース感が施されていることから、現場ではこれを「パース人形」と呼んでいる。
今回用意されたパース人形は主にTVシリーズで使用されたパース人形の型から、新たに作り起こされたもので次のような製作になっている。
 ウルトラマン・・・近年TVシリーズで新たに作られたものに顔の部分を今回用に新造形
 ウルトラマンジャック・・・今回用の新造形
 ウルトラマンエース・・・今回用の新造形
 ウルトラマンティガ・・・TVシリーズ使用の型から新たに作り起こし
 ウルトラマンダイナ・・・TVシリーズ使用の型から新たに作り起こし
 ウルトラマンガイア・・・TVシリーズ使用の型から新たに作り起こし



通常のパース人形撮影は緻密な作業になる為、1日かけて行われることが多いのだが、今回は6体を1日で撮影する。
つまり、1日でたったの6のカット撮影になるわけだ。
TVシリーズの撮影より過酷な状況とはいえ、見事な造形のパース人形の甲斐あって、下品にならない時間で、無事撮影終了を迎えた。
現場での撮影全て終了!クランクアップ!お疲れ様!
この充実した日々に感謝!感謝!
年明けから、いよいよ合成作業の始まりだ!
音の作業が終了するのが4月末日なので、実質的な現場作業はまだ半分も終わっていない。


12月27日(木) 編集

年内最後の編集作業。
撮休や、撮影が早く終わった日など、この日を含め監督が立ち会った編集は3回。
大方カットの長さが決定できるものは、ここで決定し、合成指示を出し、年明け早々に着手できるものはどんどん合成に着手していくことになる。
一方CGは既にモデリングを終了しアニメーション作業に着手。
年明けにはアニメーションのチェックが行われる見込みだ。

12月28日(金) クランクアップ打ち上げ

年内最後の編集作業。
横浜メディアセンターにある撮影でもお世話になったテレビ神奈川さんのホールをお借りして打ち上げが行われる。
各方面からの期待が寄せられた。

編集中記報告

撮影クランクアップまでやっと書き終える事が出来ました。
公開前情報なのでネタバレ部分は意図的に外してあります。
ゆえに、今までの日誌は完全版ではありません。
予定ではクランクインして一周年を迎える10月15日を目標に欠けていた部分をアップする予定です。
今後アップする内容に関しても同じことが言えます。
また、
本コンテンツは撮影日誌ではなく製作日誌なのでまだまだ続きます。
ここから先は監督補の日暮ではなく、もう一つの顔であるビジュアルコーディネーターの日暮がお届けすることになりますので、あらためまして、よろしくお願いいたします。
毎回困難を極める合成作業がいよいよ年明けからスタート。
さていかなる困難が待ち受けているのでしょうか。
乞うご期待!

 

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